2011年12月10日土曜日

チベット語学習日記 10頁目

 バイトの帰りしに、カメラを空に向けてじっとしているオッサンを2人見た。
 見かけたのがひとりだけだったら、その行動にはその人特有の理由があるのだろうと思っていたかもしれないが、2人だったし、偶然じゃないなと思った。
 さっきネットでフラフラしてて知ったんだけど、今日、日本全国で皆既月食が見られるんだってね。それでかー。
 寒い中ご苦労なこってす。
 そう!昨日の夜から突然、寒さの度合いが猛烈に増した。
 日付変わって1時頃に布団に入ったんだけど、一向に中が温まんないの。
 いつになったら眠れるんだと恐怖すら覚えたね。
 とまあ、久々にそんな与太話。
 今は後置字まとめてます。
 前置字が一応まとまったので、今日はそれについて書くよ。

前置字གおよびབ
+第三列=無気化
+第四列=声調①

前置字ད​
+第三列བ、བྱ、བྲ="wa(または"o)、"ya、"ra、+第三列これら以外=無気化
+第四列=声調①
 
前置字མおよびའ
+第三列( ླとの有足字以外)=g, dr, j, d, b, dz
+第四列=声調①

 どーでしょ。
 なんか「+P段=C段」みたいなスターがいないからか、地味すぎていまいち成功した実感がないんだけど、コンパクトっちゃあコンパクトだし、これ以上に小さくはならない気がする。
 本でもམとའは同じ機能を持つものとしてひとまとめに紹介されてるんだけど、གとབの項は別々だね。
 何故って、それぞれ付加の対象になる字が違うから。
 しかしここではそんなものでもよくて、「要するに、どうなるんだ?」ってのがキモなんですね。
 たとえば「གとདとབに付いて云々・・・」って文字をいちいち挙げていくより、「第三列(の基字、或いは有頭字や有足字)」の一言で機能についての説明が遥かに簡潔に済む。
 そしてこんな説明が適うのは、相手が前置字だからこそなのだ。
 説明が簡素化できる条件が揃っているから、それを利用している。ただそれだけ。
 前置字という分類をされる字すべてに共通の特徴として、第一列と第二列になんの影響も及ぼさないというものがある。そして、第三列、第四列に影響を及ぼす。
 上接字は、第一列に影響を持たない。第二列にはそもそも付かない。そして前置字と同じく、第三列、第四列との結合に気をつけねばならない。
 文字毎という最小単位にではなく、「列」という大きな単位に対しての機能がわかっていると、影響を及ぼさない対象の暗記を文字毎にする必要がないということに気がつける。
 努力をすること自体は輝かしいが、ムダをムダと見抜けないのは哀しい。

2011年12月9日金曜日

チベット語学習日記 9頁目

 ちょっと下接字から覚え直してます。
 後置字相手にガムバってたんだけど、ふと、「前やったこと、知らん間に忘れそうだから、軽くででも改めて勉強し直してみるか」とページを遡った。
 するとアラ不思議、これまでの覚え方の何が悪かったのか更に効率のよい覚え方を編み出そうと思いついてしまい、下接字、上接字、前置字についての情報を、今日は一日中整理してました。
 また、こうやって「どうやったらうまく頭に収まってくれるかな~」と考えながら、ひたすらノートに方法論を綴ってると、良い結果を出す過程の副産物として、いつの間にか覚えたいものについての印象が濃くなっていくんですよね。
 まぁそんな「慣れ」の喜びについてはともかく、これ以上コンパクトになるかな?ってくらい折りたたまれた説明を見よ。

下接字 ྱ: +P段=C段; +その他=Cy
下接字 ྲ: +ཧ=hr; +ས=不変あるいはtr; +K段、P段、T段=tr
下接字 ླ: +ཟ=d; +その他="la

 どーでしょう。
 下接字が追加されることによる声調や気音への影響については、表記がなければ何もないということです。
 唯一、"laのみが声調の高さと母音を伴って書かれていますね。
 特に「+P段=C段」という説明が気に入っています。これ以上に簡潔な言い方もないでしょう、たぶん。
 P段以外への影響は、見ての通り「+その他=Cy」としか書かれておらず、これだとどの基字に付記されるものかはわかりませんが、別に気にしなくていいのです。「Cy」が意味することさえ理解していれば。
 基字をちゃんと示すと、「その他」に相当するものは、K段の鼻音以外と、ཧです。音はそれぞれ"kya、"kyha、’kyha、"hyaになります。ね、「Cy」でしょう?
 下接字 ྲの段にある、「=tr」も、ちょっとコンパクト過ぎているかもしれません。たとえばK~T段第二、第三列はすべて有気音ですが、「tr」としか書かれていなかったら、あたかも無気音に変わってしまうと意味しているかのように受け取られるかもしれない。
 しかし気音に対する影響について特記されていないので、影響はないということです。
 たとえばK段第一列のཀ("ka)がཀྲに変化することが、「=tr」の一言のみで示されていれば、有足字となる前の基字の段階での声調と、無気音であるか有気音であるかという特徴は不変であることを意味しているのです。
 K段第三列のག(’kha)は、声調は’で、有気音であるから、下接字がついてགྲになれば、特徴をそのまま受け継いでその音は’trhaに他ならないと。
 どーですかね?
 ・・・ま、こうやって結局このコンパクトな説明が誤解を招かないよう、「説明に対する説明」を入れなければならないのであれば努力の甲斐もあったのかなかったのかよくわかんなくなっちゃいますがね。
 少なくとも、基字が示す音はすべて暗記していることが、このコンパクトな説明を理解する上での前提にはなってますね。

上接字ར、ས: +第三列=無気化; +第四列=声調①
上接字ལ: +ཧ=hl; +第三列ག、བ=無気化、
+第三列ཇ、ད=j、d(語中に於いて直前の音を鼻音化); +第四列=声調①

 この上接字について説明がコンパクトになった点は、ར、སの機能が同一であることを理由に、この2つを同じ段で表していること。
 声調①ってのは俺の解釈の仕方で、以前書きましたが、チベット語ラサ方言の声調の数は4つで、本で紹介されている順に、"、`、’、^なのです。つまり、①="。
 敢えて説明不足である点を探すなら、「声調①」じゃなくて、「声調①」にすべきかな、ってことくらいですかね。
 上接字は第二列には付かず、三と四以外では第一列にも付きますが、影響が皆無なのでもう説明に含めるのはやめました。初めて上接字を記事にした際には、ちゃんと「第一列についても影響なし」みたいなことを書いてましたよね。
 つまりは、これらの字が付くことによって、音や声調等が変化する基字のみに言及しているわけなんですよ。
 じゃあ「 ྲ+སは?」という疑問も生じるでしょうが、これは「不変“または”tr」なので、必要なんじゃないかなと。
 あと、下接字は、上接字や前置字と違い、「 ྲ+ས=tr」になることも考慮すれば、付加の対象になる基字すべての音に影響を齎すと言えるので、コンパクトさを意識しつつも、「すべての基字になんらかの影響がある」点を強調するために、すべての変化を表記するのもアリかなと、こう思うわけです。
 上接字の説明でひとつ気になるのは、やっぱり「+第三列ཇ、ད=j、d(語中に於いて直前の音を鼻音化)」のくだりですね。普通なら特に長くもない説明ですが・・・この中にあっては長いです。
 下接字 ླと結びついたཟ、即ちཟླ(’da)や、前置字མ(’ma)(およびའ)が語中にある場合、直前の音を鼻音化するので、「軽い鼻音を含む字の語中の働き」を「基礎知識」として覚えなければいけないと考えれば、こういう説明は不要になるのですが・・・。つーか、下接字 ླのとこでཟླにはこの機能、書き忘れてるなw
 まぁ、とにかくこんな感じで、一旦学んだことに再度取り組んでいる最中です。
 「最良」がわかんないから、たのしーんだこれが。
 上でも言ったけど、「( ྱ)+P段=C段」はキマったね。美しい。
 ま、説明の仕方は、記号が追加されて変化する基字の音によりけりだから、上で挙げたものの中には、「+P段=C段」以外にも、既にこれ以上コンパクトにしようがないものがあるかもしれない。
 後置字がこんな感じで説明できるようになったら、いよいよ本編・・・別の言い方をすれば、この程度まで手玉に取れるようになれないと、単語を読む度、目にした付加記号の機能について頭を回転させて、音を再現するだけで精一杯ってことになりかねん・・・というか、もう第一課は読み始めたって言ったけど、実際そうなっちゃったんだよねw
 ありゃーストレスだぜ。うん。
 そういうわけで「記号説明コンパクト化」の旅は続く・・・。

2011年12月8日木曜日

チベット語学習日記 8頁目

 今日は、ノートに書いたことをここに転写してみます。
 いやー、別に今まででもそうすることで勉強の成果を記事にしてりゃよかったんだけど、その日勉強したことを思い返して、ソラでここに書いていく方が本当に頭の中に入ったかどうかの確認になっていいかなって。別に苦でもなかったしね。
 ただまあ、後置字が相変わらずちゃんと覚えられてないので、昨日と同じくちょっと書いて終わりになっちゃいそうなんでね。
 昨日言及した、いずれ確立させるべき日記の体裁を決定するに至るまでに、検討すべき試みのひとつってことで、今日はやってみましょうかね。

後置字10-1: ག་ / 再後置字を伴う: གས་
 1. 黙字だが、IかEの後にある場合は稀に有音。
 2. 直前の母音を長くし、声調を下降調にする。
 3. 二音節語に於いては、第一音節では時に有音、第二音節では無音で、且つ、2.の機能がある。
 4. 語幹がག་ / གས་で終わり、接字པོかཔ​を持つ一部の語は、その接辞の音が変化する:
  ○形容詞、名詞の場合
   -ག་པོ་: ´~"Cako; Ciku; Cuku; Cekpo; Coko
   ※後置字の直前の母音が何であるかによって、接辞が含んでいる母音が変化している。
   ※また、音にKを含むので、あたかもགが有音になっているかのようだが、あくまでもPの音が変質したものらしい。以下に出てくる他の接辞も同じく。
   ※ラテン文字の直前にある’や"などは声調を示しています。「~」は「または」という意味で本で用いられているものを踏襲しています。
    "はノートでは単なる小さな横線(「高く平ら」な声調を示す)ですが、文字抜きで上部に線を表示させる方法がないので、代替としてこれを使っています。
  ○形容詞比較級、動名詞の場合
   -ག་པ་: ’~"Caka; Cika; Cuka; Cekpa; Ceka

後置字10-2: ང་ / ངས་
 1. 黙字だが、直前の母音を鼻音化させる。また、Iのあとでは有音(=/iŋ/)。
 2. 声調には影響を及ぼさないが、再後置字が付くと下降調になる。
   -ང་: ´~"Can / -ངས་: ^~`Can
 3. 二音節語に於いては、第一音節では時に有音かそうでない場合は直前の母音を鼻音化、第二音節では無音で、且つ、1.と同じ機能を持つ。Iも鼻音化する。
 4. 語幹がང་ / ངས་で終わり、接字པོを持つ一部の語は、その接辞の音が変化する:
  ○形容詞の場合
    -ང་པོ་: ’~"Caŋko; Ciŋku; Cuŋko; -○ོང་པོ་: Coŋko / Coŋpo
    ※Eを含む例が本では挙げられていないが、そういう語はないということなのだろうか?なんの説明もない。
     また、「ŋ」は本では「ドットのついたn(=ṅ)」だけど、これをタイプできるキーボードを知らないので、サーミ語キーボードで打てる、同じ音を示すŋを代替として使ってます。
  ○名詞の場合
    -ང་བ་: ’~"Caŋa; 以下略
  ○形容詞比較級、動名詞の場合
    -ང་བ་: ’~"Caŋa; 以下略

 あああ!しんどい!!
 このやり方はしんどい。
 写すだけ、なのにタイヘンなんだな。
 厳密には写す「だけ」ではなく、記事向けに内容や体裁を読みやすいように整理しつつ、だから、神経遣う遣う。
 いやー、そういや古典ギリシャ語ここに写したときも挫けそうになったな~・・・。
 ホントはまだノートには書いてあるんだけど、ダメだ、やってらんね。
 このやり方はナシだな・・・。
 やっぱ当面はソラで勉強内容を綴ることになるかな・・・。

2011年12月7日水曜日

チベット語学習日記 7頁目

 これスゲェー!!めっちゃ欲しい
 ワコムって会社の、Inklingという製品。
 これはまさに今の俺に打ってつけ!
 っちゅーのも、言語学習日記やってるのはいいんだけど、この試みを「日記」と名付けているのにもかかわらず、書いてることは日毎の成果についてじゃないんだよね・・・。
 単に学習し終えたことを振り返っているだけ。
 たとえば昨日の6頁目の内容について言えば、「第1課読み始めました」んなら、読了しておらずともどこまで読んだかなどを、「日記」であるなら書くべきだったでしょうね。
 以前、日毎にノートに書いた古典ギリシャ語を新たな記事の中にそっくり写す(明らかな誤字は訂正していたし、ある文章が形をそのままに繰り返し登場していた場合は一番最初のものだけを選んでいたりしてはいたが)ということをしていたが、「日記」っちゅーんなら、ああいうものの方がそれらしいよね。
 でもネェ、古典ギリシャ語と違って、チベット語がタイプできるキーボードがない以上は、今やっているように、たとえばLexilogosのWeb上キーボードに頼ったりと、ノートの内容を再現するにはかなり入力が面倒臭いんだよね・・・。
 上接字や前置字やなんかについて書いたときは、主に概要をその記述の軸として扱っていましたが、実際、ノートには色々書いてますよ。チベット語も日本語も。
 しかしこのInklingがあれば・・・。
 価格は約15,000で、どうにも手出しできないレベルではない。
 俺は「電気で絵を描く」ことにどうしても抵抗があるので、紙で描いたままをPC上に再現できるのなら、夢のような、という形容がこれ以上に相応しい道具はない。
 ま、スキャナでもいいっちゃいいんだけどね。まだるっこしいじゃん、取り込みだのなんだの。紙面のゴミもスキャンしちゃうしさ。
 ケータイで画像を撮って、それを元に復習&理解力が身についてきているかどうかの確認のための解説をする、ってのもいいんだけどさ・・・PCのメールアドレスに送ると当たり前だけど転送料かかるしね・・・。
 日記は続けていく気マンマンなんだけど、体裁については早めになんとかしたいですね、ホント。
 で、今日のチベット語学習日記なんですが、まだ後置字をやっとる最中なのでまとめられず、故に書けません。
 昨日挙げた10個の後置字はやはり足りてなくて、あとひとつ、འを忘れておりました。まったくの黙字であるのみならず、直前の母音に与える影響も皆無な、空気のような後置字ですが、忘れていたことに違いはない。
 というわけで、後置字は、再後置字含めて12個(厳密には、འིは助詞だが、置かれる位置から後置字と同等に見なされる)。
 ちなみに俺は、K、T、P段それぞれの第三列の基字(ག、ད、བ)とそれぞれの段の鼻音(ང、ན、མ)、流音(རとལ)、あとはསとའとའིという風に覚えました。
 後置字を学んでいる最中だと上で書きましたが、中にはその機能を完全に暗記できたものもあります。
 たとえばར。
 「一音節語、二音節語のどちらに於いても黙字で、直前の母音を長くする。声調には影響なし。助詞として用いられる際には、直前の母音がiならääに、uならooに変える(表記としては、○ི་ར་と○ུ་ར་)」。
 これが、後置字としてのརの機能です。
 ゆっくり、且つ、複数の後置字間で共有している特徴を常に意識しながら覚えていくと、案外頭の中に留まってくれるものですね。
 ここにまとめを書くには、少なくともあと1回は後置字すべての復習が必要です。
 マァ、もしかしたら日記の新たな体裁が決まって、現行の方法で後置字について綴ることはもうない可能性もなきにしもあらずですが。
 うーん、「今回は学習日記書けません」と上記しましたが、「覚えたこともあるよ!」という小さなことでも一応、学習の記録としてはれっきとした価値があるかも?
 とりあえず、今回も「言語学習日記が書けた」ってことにしときますか。

2011年12月6日火曜日

チベット語学習日記 6頁目

 6頁目・・・なのですが、今回は名ばかり。
 というのも、後置字がなかなか覚えられない。
 マァ、その数が多いことと、各後置字間で共通の機能も少ない(=各字毎に初出の要素がある)ことなどが災いして、よし全部覚えてやろうと己を発奮させ取り組んでないことが原因なんですけどね。
 当分お目にかかることのない文法的事項に関連する発音の変化などは無視すれば、大分紙面をすっきりと見渡せることができるようになるのかもしれないが、実際目には入ってくるわけで。
 もういっそ、本編に入り、多数文章を読んでいる内に身につくことを期待して、説明をまともに読むのは諦めようかとも思った。実際既に第1課を読み始めた。
 が、後置字に関して知らないまま、後置字の影響によって変化したと思しき音を目にすると、「どうしてこうなっているんだろう?」と思わずにはいられないことに気づいた。
 なので、仕 方 な く 後置字についてのページに己の歩を戻すことにしました。
 後置字は全部で・・・えーっと・・・。
 K段のག​(g)、ང(ng); T段のད(d)、ན(n); P段のབ(b)、མ(m); あとར(r)、ལ(l)、ས(s)、འི('i)・・・は確実にあったはずなので、10個・・・かなぁ?まだなんかあったかも・・・。
 また、再後置字というものもあり、これはསの1個だけ。
 一応、完全に頭に入れられてないながらも、読まずして第1課へ進んだわけではなく、全文章に目は通したので、各後置字の機能について、断片的には覚えている。
 こうした情報を総合すると、

 ①後置字の直前にある母音に影響を与えることが多い
 ②後置字が持つ子音は発音されないことが多い
 ③後置字直前の声調に影響を与える
 ④ある語尾で終わる特定の品詞の、その語尾の音に影響を与える
 ⑤ある後置字が、一音節語に与える影響と二音節語に対するそれとでは、少々異なる点がある

 といった特徴が見受けられます。
 あとは、文字と実例を以ってこれらを解説することができるようになれば万々歳なのですが・・・そこへ至るにはまだまだ頁を必要とするみたいですね。

2011年12月5日月曜日

チベット語学習日記 5頁目

 今は後置字やってます。
 ・・・が、前置字に関する一切を覚えたからページを進めたというわけではないんです・・・。
  ྭと ྰを除くすべての下接字は、これが付いた基字すべての音を変えますが、上接字と前置字は、主に無気化と声調の変化を担うのです。
 そして、ལを除くすべての上接字とすべての前置字が影響を及ぼす基字は、そのどれもが第三列と第四列に属するものであり、その効果は、「第三列を無気化、第四列の鼻音の声調を高くする」です。
 そしてこれは前置字も有しているものなのです。
 第一列に付加されないというわけではないのですが、影響が何もないのです。
 たとえばལ(lá)と、K段第一列のཀ(kā)が結合すると、ལྐという字形が形成されますが、音は「kā」のままです。
 故に、基字の一覧を順序通りに暗記しておけば、初学者であっても、すべての付加記号と基字の結合パターンを覚えておかなくても読解に事足りるのです。
 CDエクスプレスでは、一覧表という形で、これら上接字などが結合する基字をすべて載せていますが、概要を説明すると、上述の通り、簡単に済んでしまうものなのです。
 俺は何が何でも楽をしたがる性格なので、一覧表なんて掲載されても、ハナからその内容を逐一頭の中に収める気にはなりません。謙虚に取り組むべき、初めて見たものであったとしてもです。
 なので、勉強をしながら、まだチベット「語」どころかその「文字」にすら慣れていない段階から、ひたすら覚えやすい方法を模索してました。
 何度基字の一覧表を書き、付加記号らと組み合わせ、概要を自身に説明するための記述を繰り返したことか・・・。
 しかしその甲斐はありました。
 「急いては事を仕損じる」、「急がば回れ」と言った言葉、私は非常に好きですし、人生の指針として、これらが示す物事に対する考え方は生涯人生の指針としたく思いますが、明らかに損はもたらさないとわかる近道を利用しない手もないとも思います。
 前置字は全部で5つありますが、初学者のである間、注意を払ってその解読に臨まなければならないものは、ད、མ、འです。
 残りの2つはགとབですが、両者はまったく同一の働きを持っています。
 且つ、མ、འの働きもまったく同じです。
 なので、特別視の対象となるのは、実質2つです。視覚的な分け方をすれば、「ད、མ=འ」となるでしょうか。

前置字5-1: ག(khá)
第三列を無気化、第四列の鼻音の声調を高くする。

前置字5-2: བ(phá)
同上。

前置字5-3: ད(thá)
同上。
加えて、བ​(phá)をwāに、བྱ(chá)をyāに、བྲ(trhá)をrāにする。

前置字5-4及び-5: མ(má)及びའ(á)
第三列を無気化、第四列の鼻音の声調を高くする。
加えて、གをgáに、ཇ(chá)をjáに、དをdáに、བをbáに、ཛ(tshá)をdzáにする。

 5-2: བが結合の対象にしている基字ならびに、有頭(上接字を頂く基字)・有足字(下接字に乗る基字)は特に多く、一見しただけで暗記する気が削がれるほどです。
 しかしなんのことはない、第一列についても影響は皆無、第二列にはつかない(これは上接字と前置字の特徴でもある)、第三列につけば無気化、第四列につけば鼻音の声調を高くする、効果についてこの概要さえ覚えておけば問題にならない。
 勿論、この理論を以って学習を進める初学者と、一覧表をしっかり丸暗記した初学者とでは、字を読む速度はおそらく後者の方が優れているでしょう。視認して即座に字の読みがわかる者相手では、頭の回転を要する理詰めの読解は分が悪い。
 しかしこれもひとつの方法ですし、俺なりに、「楽をしつつ理解を浅いままにしない勉強法」を模索したつもりです。
 ちなみに、冒頭の「 ྭと ྰを除くすべての下接字」というくだりで、実は下接字として「 ྰ」をチベット語学習日記に初めて登場させています。
 下接字について書いたときは、すっかりその存在を忘れていました。
 というのも、本曰く、専ら外来語の音写に用いられる下接字だそうで、説明も2行の文章のみで、これが付いた基字の視覚的な例なども未登場です。
 一度そんな存在感の薄い説明文を読んだだけじゃ、そりゃ記憶には残り難いよ・・・。
  ྭとは違って基字になんの影響ももたらさないわけではなく、「母音を長くする」働きがあるそうなので、本来的な現代チベット語の言葉にとってはほぼ不要であるとしても、一応言及はしておくべきだったでしょうね。
 そうそう、当サイトに於いて、ラテン文字に転写したチベット語の代表例のようになっている「bod skad」、これの表記に用いられている「ワイリー方式」ですが、LexilogosのWeb上キーボードに併記されているラテン文字は、どうもこの方式に則ったもののようですね。
 なので、記事を書く際チベット語の入力に利用している内に、徐々にではありますが、ワイリー方式で用いられるラテン文字を記憶し出しています。
 今は、何故「bod skad」が「^phöökää」なのかがわかるようになりました。
 まず、「^phöökää」の本来の綴りは、བོད་སྐད་です。
 「^phöökää」は音写、「bod skad」は転写なので、両者の見た目にこれだけ大きな違いがあるわけですね。
 བོད་སྐད་を「phöökää」の表記の根拠になっている方式で転写すると、「photh skath」になります。
 後置字དは直前の母音を変化させ、且つ長くする働きがあるので、oはö(/ø/)になります。
 སྐという結合字に於いて、上接字ས(sā)はなんら基字ཀの音に影響を及ぼさないので、音写「phöökää」に於いては「s」が影も形もないわけです。
 そして「skath」の「a」は、「photh」の「o」と同じく、後置字དに影響され、ä(/ɛ/)に変わっていると。
 特殊記号がまったく不要の、ごくごく基本的なラテン文字のみを以ってして、世にも奇妙な綴りを創りだす「ワイリー方式」、これを理解したくてたまりませんでした。
 しかし、こうして淡々と置換を繰り返してゆくと、方式の構造の単純さに気付かされます。
 というわけで、適当にチベット文字による言葉を拾ってきて、自力でワイリー方式を用いてラテン文字に置き換えてみた言葉をここに挙げます。これは記憶していないので、ノートを見ながら書きます。

འདི་ཁྱེད་རང་གི་མིན་པས།
 W: 'di khyedrang gi minpas
 C: ディ ケラン      キ メンベー
 ※W=ワイリー方式、C=CDエクスプレス準拠。
 Cはワイリー方式による転写と実際の音との乖離を強調する為、敢えて仮名表記を採用しています。
 また、Wの表記は、Cの表記の単語毎の分離に合わせています。本来は、たとえば「khyedrang」なら「khyed rang」になります。

དབུས་གཙང་སྐད་
 W: dbus gatsang skad
 C: ユー  カヅァン  ゲー

བསྒྲིགས
 W: bsgrikhs
 C: ティー

ཁྱེད་རང་ཕྱི་རྒྱལ་ནས་ཡིན་པས།
 W: khyedrang phyirgyal nas yinpas
 C: ケラン     チギェー    ネー インベー

རྫོང་ཁ་
 W: rdzongkha
 C: ツォンカ

 ・・・こんな具合です。すさまじいですね・・・特に「dbus=ユー(üü)」、そして「bsgrikhs=ティー(trii)」は、自分で書いたのに身震いするかのような奇妙さ!
 正直、ワイリー方式に面白さを感じるのは、チベット語の勉強の本質とはあまり関係がないような気もするんですが、「phöökää方式」とは違い、チベット語を基本的なラテン文字のみで記すことができるというのは非常に有用なので、これからはチベット語にラテン文字を併記するときは、ワイリー方式に則った表記法で綴っていきたいと思います。

2011年12月4日日曜日

チベット語学習日記 4頁目

 ハイ、では昨日の続きで上接字
 ・・・といきたいところなんですが、「暗記した」と言っても、実は暗記できたのは付加にあたってのその働きであって、どの基字に付くかってのはちゃんとは覚えてないんですよねぇ。
 というのも、基字に与える影響が、3つあるものすべてがどれもほぼ同じなんです。
 なので、上接字にはどんなものがあるか、上接字の最大の特徴は何か、を覚えておけば、ある3つの基字との組み合わせ以外については別段神経質になることはないんです。

上接字3-1: ར(rá)
概要-付加の対象となった、འ(á)とཤ(shā)を除く第三列の基字を無気化する。
また、第四列鼻音の声調を高くする。

上接字3-2: ལ(lá)
概要-付加の対象となった、འ(á)とཤ(shā)を除く第三列の基字を無気化し、
(chá)とལྗを形成し音をjáに、(thá)とལྡを形成し音をdáにする。
また、(hā)とལྷを形成し音をhlāにする。
また、第四列鼻音の声調を高くする。

上接字3-3: ས(sā)
概要-付加の対象となった、འ(á)とཤ(shā)を除く第三列の基字を無気化する。
また、第四列鼻音の声調を高くする。

 ・・・という具合です。
 見ての通り、རとསに関しては内容がまったく同じで、ལのそれは他2つと同一ではないものの、同じ特徴を含んではいます。
 上接字は第一列の基字にも付くんですが、その音にも声調にも一切影響を及ぼさず、上記の通り、第三、四列の基字が頂いていると認めたときにだけその読みに気を付ければ事足りるわけです。
 今は前置字をやっていますが、これも第三、四列の基字にばかり影響を与える要素ですね。

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