これが古英語だ!
って、俺がこんなとこで書くまでもないんだが。
今まで名詞の曲用をひたすら覚えてたんだけど、今日はなんとなく文章を書いてみた。
・・・何故か暗記してしまった。暗記しようとなんら意識したわけじゃないんだけど・・・。
いつもこんな超能力発揮できるようにならねぇもんかなあ!
リフトリーチェ・ヒー・スィンド・アングレ・ィェハーテネ
Rihtlice hi sind Angle gehatene.
(Rightly they are called Angels.)
Rihtlice hi sind Angle gehatene.
(Rightly they are called Angels.)
これが生まれて初めて模写した古英語文。英訳・・・現代英語訳は本に書いてあるものそのまま。
さて古英語をご存知の方は、綴りにちょっと引っかかるかもしれない。
まずマクロンがありませんね。マクロンはマオリ語キーボードで出せるけど、あのドットはどのキーボードで出せるのかわからん。ドット自体はチェコ語キーボードとかで出せるけど、「C」、「G」の上に付けるとなると・・・。今日は探す気になれんかった。また別の日にふと思い立ってしつこく色んなキーボードを試しまくってそうだな。
あと「rihtlice」のcと「gehatene」のgの上にドットがないんですね。この2文字は前後に隣接する字母に影響されてその音を変えます。簡単に言うと、
C: 「acclaim」では/k/で「rice」では/s/、
G: 「bargain」では/g/で「edge」では/dʒ/を示す
という音声の変化と同等です。古英語では、「C」は/k/と/tʃ/を(/s/の音は持たない)、「G」は/g/、/ɣ/、/j/、/dʒ/を語中の位置と前後の字母の影響によってかわるがわる示します。ちなみに、/k/の音を示す字母としては「C」が使用率に於いて圧倒的に優勢で、「K」が使われることは稀だったそうです。ゲルマン系といえばKが多用される印象があるので、これはちょっと面白いなと思いました。
ただ、本来はこういった記号は付いてなかったらしいけどね。後代・・・つまり近代、現代、読み易くするために便宜上付けられ始めた記号なんだそうだ。古典ラテン語とか古典ギリシャ語の語学書にマクロンが書いてあるのと同じ理由だな。ただ古典語の、綴りに現れない長音は、それが長かったかどうかってのは、音声資料が皆無な為後代の人間が単語毎に含まれる母音の長さを知ることが何故できたのかと考えると、今で言うマクロンを付した文章が残ってたってことなんですかね。いや、かつて作成された辞書が残ってたとかなのかな?
「H」は、語頭では/h/の音を持ちますが、母音の後ではドイツ語の二重子音「CH」の如き性質を持ちます。文頭の「riht-」はさながら「richt」と書いてあるようなものですね。
で、言わずもがなですが、今回の記事の題はこの文章を本に全く忠実に綴ったものです。
まだある、暗記した文章。全部で4つあるんだ。2つめはコレ。
サル・ワアルズ・オフスラィェン・ルクモン・キュンゲス・ィェレーヴァ
Þær wearð ofslægen Lucumon cynges gerefa.
(There Lucumon the king's reeve was slain.)
Þær wearð ofslægen Lucumon cynges gerefa.
(There Lucumon the king's reeve was slain.)
マクロンと特定の子音字の上のドットを除けば、「古英語・中英語初歩(市川三喜、松浪 有 著)」準拠の綴りを用いた古英語文はアイスランド語キーボードでタイプが可能です。「この本準拠」とわざわざ書いたのは、「ウィン」という文字はタイプできるキーボードがないからです(少なくとも俺のPCには)。Wと同音価を示す借用されたルーン文字で、Ƿ(ƿ)と書きます。
「ofslægen」のfは/f/で、「gerefa」のfは/v/として音写がしてあるのは、「F」が位置によって異なる音を持つからです。母音間で/v/となります。元々無声子音である「F」が特定の環境下で有声化する現代の言語は見たことないけど、有声の「V」が位置によって無声化する言語ならスラヴ諸語(キリル文字の場合は「В」)から簡単に見つけられますね。たとえば、個人的に今期イチオシアニメのひとつ、「うぽって!!」に登場する銃器・AK=Автомат Калашникова(アフタマート・カラーシュニカヴァ)とかね。
余談ですがウェールズ語にはVという字母がなく、/v/はFで示されます。FFで/f/です。/v/と/f/をこうやって表している言語は今のところウェールズ語以外には見たことがなく、初めて勉強した際面食らった要素のひとつです。どういう由来があるんでしょうかね。
「wea-」を「ワア-」としているのは、「ea」という二重母音は/æə/と発音されるとする本に因ります。
そして3つめ。
アンド・ネ・ィェラード・ズー・ウース・オン・コストヌンゲ
And ne gelæd ðu us on costnunge.
(And lead thou not us into temptation.)
And ne gelæd ðu us on costnunge.
(And lead thou not us into temptation.)
2つめと、この3つめの文章には「ð」で始まる語がそれぞれに1つずつ含まれていて、カナでの読みは有声子音として表現しましたが、正直正しいのかどうかわかんないです。単語内にあって母音間に挟まれている際には有声化するとは書いてあったけど、語頭にある場合どうなのかという説明はなかったしなあ。
ちゃんと有声 / 無声の区別をdh / thで表現しているアルバニア語、dd / thで表現しているウェールズ語の正書法を考えた人はエライ・・・当然の仕事か。
/θ/と/ð/は、それぞれ必ずþとðによって示される・・・わけではなく、いずれの字母も両方共の音価を持つという悲しい無駄。元々は前者が無声、後者が有声だったらしいけど、本にいちいち「古くは」と書いてあるので、この本で扱ってる時代の古英語では混同されてたんでしょう。故に「þær」とあってもその音は必ず「サル」であるとは断言し辛い、と・・・特に学者でもなんでもない俺からすれば。
いやまあ、もしかしたらこの語学書が説明不足なだけで、位置によって発音のされ方がまったく規則的に決まってたのかもしれないけどね。
では4つめ。
スム・ヒーア・フェーオッロン・ウィズ・ウェィ
Sumu hie feollon wiþ weg.
(Some of them fell along the way.)
Sumu hie feollon wiþ weg.
(Some of them fell along the way.)
またþだね。直前が母音で後ろが半母音だから/ð/かな?ってことでこのカナ音写。
じゃあ母音間で/v/となるfは「ヴ」と表すべきなんじゃないの?って・・・こまけえことは・・・イインダヨ・・・。 ちゅうか単語内はともかく、ある単語の尻とそれとは別の単語の頭の狭間という環境についてまで考える必要はないかも・・・。
ちなみに模写した文章は全部で5つあったんだけど、最後の5つめだけはこれら4つに比べると長くて忘れちった。
あと、現代英語と同じく、後期古英語の「e」は、アクセントのあるもの以外は曖昧な音を持つ傾向にあったそうだけど、本にはそういう事実があると前置きした上で敢えて/e/を示すものとすると書いてあったので、ここでの発音のカナ表現はそれに準じた。
ホントびっくりしたよ。なんで俺こんなの覚えられたんだろ?
各単語に対応する、現代英語に於ける言葉と共に知ったから?
でも俺、知らない言葉がここにはあるんだよ。reeveとslain。初めて見たかどうかはわからないけど、意味は知らない。あと、「fall along the way」ってどう訳したらいいの?実は和訳をせず、本から現代英語訳をそのまま持ってきたのはこういうのが理由なんだよ。
こんくらいなら頭にある程度の間留まって当然なんだろうか?