2012年1月20日金曜日

Skylarking in Utopia

 昨日は、新しく買ったCDどれ聴こうかと思いつつ、あれらと同じシリーズの中の1枚、DokkenBack for the Attackに何故か手が伸びて、結局聴かずじまいでした。意味わかんねぇよ、俺。 
 で、今はXTC聴いてます。
 うむむ・・・こいつらホントなんなんだ・・・。
 いや~、このSkylarkingが彼らの代表作のひとつ、ということしか知らずに聴き始めたが、ホント、形容が難しいな。
 何人体制であるかすら知らなかったが、少なくともこのアルバムにクレジットされているXTCのメンバーは3人。3人ともが歌えるグループみたいね。そしてドラマーがいないようだ。
 そして意外にもイギリスのバンドなんだね。なんかいかにもアメリカ人がつけそうなバンド名だと思ってたんだが・・・。
 聴き出してから2、3曲目くらいでふと、Coldplayが脳裏に浮かんだ。
 バンドという体裁や、バンドの中で自分たちが元から扱い方をよく知っている楽器に固執してなさそうな印象から来たものに違いない。
 他にもボーカルラインはThe Beatles、ごった煮感からPet SoundsThe Beach Boysなんかも彷彿とさせられた。コーラスワークもすごくそれっぽい。
 つまりは-イギリス然ってことでしょうか。
 それにしてもこれはクセになりそうだな。
 スタジオワークでどれだけ緻密なものが作れるかに重きを置いて、ライブやなんかで再現できるかどうか考えてなさそうな連中だから、音楽のグループとかバンドとしてはまったく好みじゃないんだが、こういう、「いいと思うもんは全部混ぜるぜ」的な姿勢は大好きだ。やっぱ飽きもこないしさ。
 昨日Dokken聴いてて改めて思ったけど、俺やっぱああいう印象的な箇所が極めて部分であることが目立つ作風を身上としてるバンドってニガテだ。特にDokkenは、Don Dokkenの歌う印象的なサビとGeorge Lynchのギターソロがなけりゃ絶対聴く気にならんな・・・。すごいピンポイントな楽しみ方だよね。
 でもさ、あいつらMr. Scaryなんていうとんでもないスリリングなインストを残してるんだよな・・・。あれはホントかっこいいね。終始シビれるつくりだ。あれくらい聴き所満載なバックトラックに見合うだけのキレ味のある歌の旋律が乗った曲があったなら・・・いや、もしかしたらDokkenカタログの中にあるのかもしれない。俺はアルバム単位だとBack for the Attackしか聴いたことないしね、わからない。 
 Kiss of Deathを聴いて、「これがBreaking the Chainsを歌った男の数年後の成長の証か!」と驚嘆したものだが、結局、メタルボーカリストとしては何もかもが足りてなかったのかもしれないね。
 少なくともBack for the Attackで聴ける限りでは、歌のメロディは割と耳に残りやすいものを作る才能があったみたいだけど、その旋律の構成はかなり安直で、そりゃ耳に残るわな、ってものばかりなんだよね。ほぼサビでしか魅せられないってのもねぇ・・・。
 「曲に乗せる、つくられたメロディ」という、彼の身体から切り離されたものには多少なりとも心を動かされたが、彼とは不可分である彼の歌声自体に聴き惚れたってのはアルバムを通して皆無だったな。
 まぁ、Don Dokkenへの不満を口にするのはこれくらいにして、XTCね、XTC。
 これは何度も聴き甲斐があるよね、やっぱ。
 印象に残ったメロディとかありますか?って言われても、ない。
 正確には、覚え切れていない!
 今#11、Mermaid Smiled
 ここまで聴いて得られた最も強い感想は、とにかく「ただものじゃない!」ってこと。
 歌に惚れたわけでなく、楽器の演奏に惚れたわけでなく、ボーカルのメロディラインに惚れたわけでもなく、しかし一度聴いたらさっさと棚に仕舞って他のものを聴きにかかろうという気にさせてくれないだけの強烈な、底なしの面白さがこのアルバムにはある。
 惚れられるだけのものがなかったというよりは、多様な要素のミックス具合が半端なくて、それらひとつひとつの、楽曲内に於ける価値を探ろうとしている内に次から次へと新しいものに心を乱されて、何が何だか判らないまま気がついたら「たくさんの聴き所があった」という印象が残っただけという感じ。
 これは厄介ですよ。なんせ、それがたくさんあったということだけはわかってるんですから。これから何度も繰り返し聴いて、気になった箇所の真価をひとつひとつ確かめて回らないと気が済まない。
 初リリースが1986年とのことですが、リマスター効果かなんなのか、低音が聴覚にとても気持ちの良い響きを持ってますね。
 即ち、やたらめったらボトムが重いわけでなく、楽曲のリードとしての存在感がやや薄かったりするわけでもなく、ホントに正しく「ベース」って感じ。
 また、必要以上に硬質でもなく適度に柔らかい音をしているから、楽曲に用いられている空間に弾力が感じられて、足元は覚束ない感じでどんつきもどこだかよくわからない場所の中で聴かされている感覚を与えられ、多くの曲に共通して存在している「怪しさ」の演出の根源としても申し分ない。
 クレジットによると、ベースはXTCの3人のひとり、Colin Mouldingが弾いているようだ。遅まきながら、また新たな俺にとってのベースヒーローの発見である。
 それともこの素晴らしい音作りの功労者は、帯の文句にウリのひとつとして登場しているプロデューサー、トッド・ラングレンなのかしら?(どっかで聞いたことある名前なんだよな、コレ・・・)
 クレジットの確認と共に目に入ったが、このアルバムがミックスされたスタジオの名は、アメリカ、ニューヨークはウッドストックにある(あった?)「Utopia Sound Studios」・・・。
 「ユートピア(理想郷)」がどんなものかはわからないし、この言葉を考え出した者にとっても完全に定義できていたものかどうかもわからないけど、善か悪か、「ユートピア」という言葉やその響き、これにある印象などから連想されるのは、とにかく「得体の知れないもの」に尽きる。そしてこれに向ける果てしない想像は、まるでこのSkylarkingという多様な音楽要素のハイブリッド極まる存在の、終わりが予期できないその真価の探求にそっくりだ。
 得体の知れないものの名を借りた「Utopia」で完成を見た得体の知れない「Skylarking」・・・できすぎでしょう?

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