2010年11月23日火曜日

暗記のはなし II

「暗記のはなし」になりました。

どこまで書いたのか確認しながら記していくのが面倒なので、
続きモノであることを気にせずさっさと話を終わらせちゃいます。
昨日は動詞の活用の暗記についてを書いた。
まぁ、ラテン語の語順の話の方が字数上は長かったけど。
他、暗記しておかなければならないものといえば、
名詞の曲用(活用、格変化などとも言われる)。
言語毎に格の名称、用法、数などがバラバラだが、
そもそも俺が学習経験のある言語の殆どが
名詞曲用を有さないものだったので、
覚えた数と言ってもしれてる。専ら、古典ラテン語と
古典ギリシャ語の曲用の比較をしていた覚えがある。
学んだことのある言語の内、曲用を持っていたのが、
古典ラテン語、古典ギリシャ語、フィンランド語、ハンガリー語、
ポーランド語、チェコ語、ロシア語、アルメニア語、トルコ語、
アラビア語、サンスクリット
(フ、ハ、トのものは厳密には曲用ではない)。
この内多少なりとも覚えているのはラテン語とギリシャ語だけで、
曲用に於いての語形上の特徴が相互に比較的似ているのも
この2言語だけ。
ラ、ギ、ポ、チ、ロ、アは同一の祖語の子孫だが、
ポ、チ、ロはスラヴ語派、アはアルメニア語派。また、ラテン語は
イタリック語派でギリシャ語はギリシャ語派だが、
この2つの語派に比べると語形は大分近いと言えるので、
比較遊びに取り上げられた。
たとえば「神」はラ: deus、ギ: θεός(theos)と言うが、
明らかに祖先となる言語からの分化が著しくないと
見て取れる(冠詞のある(ギ)・なし(ラ)など、
他の要素を見てみれば細かい点でたくさん違いがあるが)。
ちなみにこの2つの言葉の曲用は以下の通り。

deus

s. / pl.

nom. deus / deī
gen. deī / deōrum
acc. deum / deōs
dat. deō / deīs
abl. deō / deīs
※nom(inative)=主格、
gen(itive)=属格(スラヴ系では生格(せいかく))、
acc(usative)=対格、dat(ive)=与格(為格(いかく)とも言う)、
abl(ative)=奪格(スラヴ系では造格)

θεός
s. / pl.

nom. θεός(theos) / θεοί(theoi)
gen. θεοῦ(theū) / θεῶν(theōn)
acc. θεόν(theon) / θεοῦς(theūs)
dat. θεῷ(theōi) / θεοῖς(theois)
※ギリシャ語に奪格はない
また、ラ・ギ共に呼格は割愛

そっくりと言えるレベルだと思います。まぁ、男性名詞の
一番単純なやつ同士を比較させてるので、近似性の主張に
於いて恣意的と言えば恣意的ではあるんですが。
また、フとハは両者ともにウラル語族に属するが、
面白いほどさっぱり似ていない。これで語派が違えば
両言語間の相異にも納得がいったのだが、
フィン・ウゴル語派で共通。この語派に属し、
日本でも学習の機会が持てる他の言語に
エストニア語があるが、少なくともハンガリー語の知識は
この言語には活かせなさそうな印象がある。
あと暗記で楽しめるものと言えば数詞。
男/女の文法性を有するヘブライ語、アラビア語などは
これまでに書いた通りであるし、
何よりもこういう基本中の基本である要素は、
同一語族、同一語派に属する言語間では
大抵わずかな違いが見受けられるだけなので、
ズラーっと並べてちょっとずつ違うさまを眺めるのがオツなのだ。
月(時間)の名前なんかも似たり寄ったりだが、俺はこれは
大抵の言語で真面目に覚えようとしない。
何故かはわからんが、とても面倒臭く感じる。
では各言語の数詞を並列させながら挙げてみよう。

インド・ヨーロッパ語族 イタリック語派
フランス語 / スペイン語 / ラテン語

※以下、初見で読み難いと思われるものには
日本語風の読み方を併記してある


un(アン) / uno / ūnus(ウーヌス)
deux(ドゥー) / dos / duo
trois(トロワ) / tres / trēs(トレース)
quatre(キャトル) / cuatro / quattuor(クワットゥオル)
cinq(サンク) / cinco / quīnque(クウィーンクウェ)

six(シス) / seis / sex
sept(セット) / siete / septem
huit(ユイット) / ocho / octō(オクトー)
neuf(ヌフ) / nueve(ヌエーベ) / novem(ノウェム)
diz(ディス) / diez(ディエス) / decem(デケム)

インド・ヨーロッパ語族 スラヴ語派
チェコ語 / セルビア語 / ロシア語
※セルビア語とロシア語は見易さを考慮して
ラテン文字に転写してある


jedem(イェデム) / jedan / odjin(アヂーン)
dva / dva / dva(ドヴァー)
tři(トジ) / tri / trji(トリー)
čtyři(チュティジ) / četiri(チェティリ) / čjetyrje(チティーリャ)
pět(ピェット) / pet / pjat’(ピャーチ)
šest(シェスト) / šest / šjest’(シェースチ)
sedm / sedam / sjem’(シェーミ)
osm / osam / vosjem’(ヴォーシャミ)
devět(デヴィェット) / devet / djevjat’(ヂェーヴャチ)
deset / deset / djesjat’(ヂェーシャチ)

インド・ヨーロッパ語族 ゲルマン語派
ドイツ語 / デンマーク語 / 英語


eins(アインス) / en / one
zwei(ツヴァイ) / to / two
drei(ドライ) / tre / three
vier(フィーア) / fire(フィーア) / four
fünf(フュンフ) / fem / five
sechs(ゼクス) / seks / six
sieben(ジーベン) / syv(シユ) / seven
acht(アハト) / otte(オータ) / eight
neun(ノイン) / ni / nine
zehn(ツェーン) / ti / ten

最後に、さっぱり似ていないモノ

ウラル語族 フィン・ウゴル語派
フィンランド語 / ハンガリー語


yksi(ユクシ) / egy(エッジュ)
kaksi / kettő(ケッテー)
kolme / három(ハーロム)
neljä(ネリヤ) / négy(ネージュ)
viisi(ヴィーシ)/ öt(エト)
kuusi(クーシ) / hat
seitsemän(セイツェマン) / het
kahdeksan(カフデクサン) / nyolc(ニョルツ)
yhdeksän(ユフデクサン) / kilenc(キレンツ)
kymmenen(キュンメネン) / tíz(ティーズ)


1, 4, 5, 7, 9, 10は前舌(実際は、e(egy, négy, het, kilenc)かi(
kilenc, tíz)しか
有していない言葉は前舌に属するのか後舌に属するのかの区別は一見つかない)、
3, 6, 8は後舌とか、すっごいくだらないけど
前舌 / 後舌という分類に於いて共通点を持たないkaksiとkettőは
いずれも語頭にKを持つとかw、必死に共通点探しながら覚えたなあ。
最終的にフィンランド語の方は、viisi, kuusiの語感が似てるとか、
7以下は-Vnを語尾に持つとか、
自分なりに「ひとつ覚えれば他のものも自然と思い出せる」方法を考えながら暗記したけど。
大分頭を使いながら覚えていったせいか、フィンランド語の他の要素は殆ど忘れても
この基数詞はちゃんと覚えてる。いまだに99まで数えられるぜ。
この後、11~19はyksitoista, kaksi-という風に、1の位+toistaで構成されて、
1の位を除いた20~90はkaksikymmentä, kolmekymmentäという具合に
1の位+kymmentä(キュンメンタ)で増えていく。21、22といった表現は、
kaksikymmentäyksi, -kaksiというように、日本語と同じく10の位+1の位だ。
99はyhdeksänkymmentäyhdeksän。100は忘れた。
というわけで、暗記は、対象によってはとても楽しいのです。
「とにかく丸暗記!」
とか
「この後の学習はこれまでの内容の丸暗記が前提!」
とか
「まずはスキットを暗記してから細かい点を!」
とかが最悪なんですね。
まぁ、著者の言う通りに勉強を進めていくこともないんですが。
ヘブライ語の勉強、といっても初歩中の初歩ですが、
それがある程度済んで、アラビア語の勉強に
活かせるかと思ったのは以前書いた通り。
しかし全然思惑通りにいかず、
結局暗記に次ぐ暗記で勉学を進めていかねば
ならないことがわかったので、今どうしたら効率良く
諸要素が頭に叩き込めるか思案中である(泣)。

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