基字をすべて覚えました!
基字ってのは、所謂アルファベットです。
デーヴァナーガリーと同じく、発音の際の舌の位置と有気 / 無気を基準にその並びが決められており、サンスクリットを通してデーヴァナーガリーのシステムを既に学んでいた俺にとっては、とりあえずその順序に対する理解には苦労しませんでした。
文字自体を覚えるのには結構手こずったけどね。
ཀ ཁ ག ང
ཅ ཆ ཇ ཉ
ཏ ཐ ད ན
པ ཕ བ མ
ཏ ཐ ད ན
པ ཕ བ མ
ཙ ཚ ཛ ཝ
ཞ ཟ འ ཡ
ར ལ ཤ ས
ཧ ཨ
ར ལ ཤ ས
ཧ ཨ
以上、30字。ཨとའ(いずれも/a/)を除いてすべてが子音です。ただ、ཝは/wa/、ཡは/ya/なので、これら2つは半母音と言うべきか。
文字の入力は結局Lexilogosの力を借りてやっちゃいましたね。文字をちゃんと覚えた後だと思ったよりもまだるっこしくなかったです。やっぱ転写してラテン文字で記すより、こっちの方が勉強の成果が表れてる感じがしていいやね。
縦の列を左から第一~四と分類し、横の列は、ཞ ཟ འ ཡを境にこれ以上を、仮に、上から、K段、C段、T段、P段、TS段と呼びましょうか。但し、TS段右端は上記の通りཝ /wa/なので、/ts/という音とは無関係です。
仮名にすると、ガ行、ジャ行、ダ行、バ行、ヅァ行です。無気、無破裂で口に若干緊張がこもるので、発音記号上は/k/だったり/t/だったりするのですが、実際は「ガ」「ダ」というように聞こえます。
基字単体で示すことはできませんが/g/や/d/に相当するものもチベット語にはあり、弱い「ん」のような音が先に伴われるので、「ガ」「ダ」ではなく、仮名で表現するとすれば「ンガ」「ンダ」というように書くのが、CDエクスプレスに従っての一種のやり方です。
ただし、 鼻音が並ぶ第四列のK段右端に位置するངも、仮名にするとすれば「ンガ」になります(kingの-ngの音)。
CDエクスプレスだと、たとえば/g/の仮名転写は「ガ」の直前上方に小さな「ン」が記されています。少なくとも単にキーボードでタイプしてるだけじゃムリだ。印刷物ならではの羨ましい策だ。
まだ/g/を示すチベット文字による表記の仕方は登場していないのですが、/d/ならひとつ、出てきました。
ཟླと書くのですが・・・これ、基字ཟと、下接字としてのལの組み合わせです。
それぞれの音は、/s/と/l/・・・。
もうこれだけで、ワイリー方式による転写の一例、「bod skad」の音が実際は「^phöökää」である理不尽さの原因が窺えるというものですね。
たとえば「sla」と書いてあれば読みは/da/である、と解釈してもいいんですよね、これ。デンマーク語なんてメじゃないぜ!
というわけで、今はこういった下接字、上接字が基字に付与されることによって生じる音の変化を学んでいる最中です。
これちゃんと習得しないと、文章どころか・・・単語どころか、一文字すら読めませんでしょうね。
たとえば、ཀྲとཔྲの音はどちらも/trā/です。発音記号は知らないけど、サンスクリット・デーヴァナーガリーのट一字に当たると思います。ちなみに-aの上のマクロンは声調を示しています。
また、ཁྲ、ཕྲ、གྲ、བྲ、དྲはすべて/trha/です。但し、声調は前2つ(/trhā/)と後3つ(/trhá/)で異なるので、あんまりいい例の取り上げ方ではありませんが。-h-はこれらが有気音であることを示しています。
そんなわけで、今は謂わば、「き」の右上部に点々がつけば「ぎ」になりますよ、みたいな程度のことを学んでいる最中です。
他のCDエクスプレスと違い、文字に関する説明が、第1課入るまでに長いこと長いこと。
第1課入りました!と書けるのは一体何頁目でのことになるやら、てんで想像がつきません。
一昨日書いたことですが、デーヴァナーガリーと違い、付加記号がついても基字の元の音にまったく影響を及ぼさない場合と、s+lで=daになったりと理屈じゃよくわからない音の変化についてとにかく暗記が必要なものと色々あるので、まだしばらくはこのチベット語の文字システムには煩わされそうです。
ただ、助かる点というか何と言うか、デーヴァナーガリーと違って、基字に別の文字が追加された際に生じるまったく新たな字形があったりするわけではないので、字を綴ること自体は楽です。
たとえばデーヴァナーガリーだと、क(母音を含んでいない場合)とषでक्षです。まさに理不尽。しかも合字によっては、PCでタイプしたものと、書籍に掲載されているものとで字形が異なったりするもんだから、一体本当はどう綴ればいいのやらと、サンスクリットを勉強していた頃は混乱したものです・・・。
今日は日中寝てたりしたので思うように学習が捗ってはいなかったのですが、それでも学習の成果を、チベット文字を以って、本などを再度確認しなおしたりせずすらすらと綴れたことは、ささやか乍ら嬉しいことです。
チベット語には標準語がないし、この本に書かれていることが、音や綴りなどすべてひっくるめて100%正しいとも限りませんが(誤字とかあるかもしれないしね。ラテン文字転写に関しては、既にひとつ見つけました)、それでも今の私にとってはこの本がチベット語のすべてなので、焦らず、内容を丸暗記するつもりでゆっくりと学習の歩を進めて参りたいと思います。